ムネモシュネ

記憶とはこんなにも不死

『フラジャイル』ぎりぎりの正義

『フラジャイル』草水敏・恵三朗/13巻を読んだ。 今巻もめちゃくちゃ面白い。 人は一体どのようにして、こうした正義の基準を自己の内に養うのだろうと思う。本当に不思議で魅力的だ。 医者サイドの主人公が岸先生なら、製薬会社サイドの主人公は間瀬さん。…

『熊と踊れ』

北国の荒涼とした雪景色そのままを写し取って成長したような三兄弟の心。それがまざまざと見える文体に好感を持った。何かの台本のように一文は短く説明的ですらある。いかにも寒々しく、それがいいのである。三兄弟は、特に長兄のレオは、幼い頃からおのれ…

『ムーン・パレス』ポール・オースター

オースターの評判を聞いて気になっていたので図書館で借りて読んだ。訳は柴田元幸。軽やかな文体。水が流れるような酩酊。酒に飲まれているのに酒臭さがない。この野原の風景を壁に描いた無菌室のような文体はどこから生まれるのだろう。オースターの(ある…

『あらゆる名前』ジョゼ・サラマーゴ

戸籍管理局に勤める実直な男が主人公の小説。 彼には有名人のプロフィールをスクラップして収集するという趣味がある。 ある日誘惑に負けて禁を犯し、ただ趣味のためだけに有名人の戸籍を覗き見てはその内容を複写するようになる。やがて有名人のみに飽き足…