ムネモシュネ

記憶とはこんなにも不死

『何があってもおかしくない』エリザベス・ストラウト

アメリカの田舎町で展開される小さな事件と、その後を生きる人々の物語。
人生は「何があってもおかしくない」。何かが起きたあと、人は風のように消えるなんてことはできなくて、霞を食って生きていくこともできなくて、じくじくと疼く生傷やしがらみを抱えたまま、あるいは現実を直視し、あるいは真実から目を逸らして生きていく。その様がアメリカ中西部の長い長い畦道と重なって見える。気が遠くなるほどどこまでも続く茶色の道、土埃、朽ちた看板、白々しいほどの青空。
焦れったいほどゆっくりと、倦怠感を伴って奈落に落ちてゆく、落ち続けてゆく人たちの物語。
舞台となる町は、どんなときも知らん顔で白々と晴れている。