ムネモシュネ

記憶とはこんなにも不死

『アリー/スター誕生』を観た

タイトルの通り映画を観に行った。ネタバレ注意。


天性の歌声をもつけれど町のクラブのいち歌手に埋もれている女性(レディー・ガガ)と、田舎の農場生まれで既に成功したボーカリスト兼ギタリスト(ブラッドリー・クーパー)の、出会いから別れまでの話。
断っておくけど私は映画に疎い。その上で感想をいうなら、とりたてて見所のある映画のようには思えなかった。
ブラッドリー・クーパー演じるジャックは、大切な人の幸せを邪魔する自分に絶望して自殺したけれど、自死遺族の描写についても、深みとか見ごたえとかはなかったように思う。


それでも何となく印象に残っているのは、ジャックの人物造型が純粋無垢だからだろうか。
「大切な人を幸せにできない自分に絶望し、自殺を図る。」というと、どうしても太宰治を思い出すけれど、決定的なイメージの違いは、ジャックは人の尊厳を、投げやりにならず、大事にしていた、という点かな。
観たあとは、こういう人っているよねえ、と思った。
この映画の主人公は、アリーではなくジャックだと思って観たほうが楽しめる気がする。原題は単に『A STAR IS BORN』(=「ジャックという人が死んでお星さまになったんだよ」風に解釈してもいいだろう)だし。