ムネモシュネ

記憶とはこんなにも不死

なれないからこそ憧れる、とも言う。

憧れるものならいくつでもあった。

誰かに憧れることと自分を否定することは、最初から同じことだった。そうしてそれがいつの間にか苦しくなっていた。
やがて私は憧れの人たちのようになることをあきらめた。ああはなれないと分かりきってしまったものにすがることは無意味だから、手放した。
自分を否定されることなどには慣れきっているから、そんなことは構わなかった。ただ憧れを手放すことが辛かった。

どうしても自分が人間だとは思えなかった。
今でも人間になることをあきらめてはいない。
けれど、親切で気高い彼らと屈託なく笑える日は、多分永遠に来ない。

たとえ彼らのようになれないとしても、好きでいるのは自由だろう。
この世の希望の全てを凝縮した炎に胸の奥を焼かれ、一生癒えない火傷の痕を抱えながら、自分の欠点や短所を嫌というほど思い知らされながら、それでも生きていくしかないのだ。